おバカの痒み顛末記

おバカの痒み顛末記
◎おバカも人並みにかゆい◎

(^_^)おバカの痒み*おバカもカユカユ*

*銀座ジュエリーマキのポーズ(ハイヒールなし)*




*痒みとおバカの関係

  子供の頃はある一定の条件が揃うと、決まって痒くなったように思います。
例えば、法事に連れていかれて、お坊さんが読経を始めると、どこか痒くなりました。鼻の頭だったりして、そーっとそこを 掻くと次に背中が痒くなり、何とか背中を掻くと今度は足の裏という具合で、お経が終わるまで際限がなく続くのでした。
毎週月曜日にあった朝礼で校長先生が訓示をたれる時も決まって痒くなりましたし、かくれんぼで公園の植え込みに隠れていて 鬼が近づいて来たときも痒くなり、ついモソモソと掻いて見付かったりしたものです。実に悔しい思いをしました。
これら幾つかの事例から考察して、じっとしていなければいけないと言うストレスが、痒みを生み出していたように思われます。 蚊に刺された痒みの場合には「キンカン」というツンと鼻を突くアンモニア臭の、日本伝統の薬剤を繰り返し塗布する という生活習慣が日本にはある事は広く知られています。しかし、ジッとしていなければいけないと言うことがもたらす 緊張が痒みを誘発するという習慣が、おバカ固有のものか、広く一般の生活習慣に根付いたものなのか、未だ解明されてはいません。
今まで何種類もの痒みに悩まされてきた人類の一員として、この問題もいずれは解決されねばならない重要な研究テーマで あると思われます。
  ところで先日、私はまた新たな痒みに襲われました。
朝起きると、左の脇の下から二の腕の内側にかけて痒いのです。ボリボリと掻きますと右腕の同じ部分も痒いのです。 さらに両太股の内側も痒いし、お尻の脇から腰にかけても痒いし、肩の下から背中にかけても痒いのです。要するに 体の柔らかい部分のあちこちが痒いのです。
しばらくボリボリやっていましたが、朝の事、仕事に行かねばならず、あまり時間もありません。ボリボリは適当にし、 もぞもぞと起きだし、いつものように朝食の食卓につきました。ここが勤め人の辛いところです。
私は家族に言いました。
  「なんだか、あちこち痒いんだよな。蒲団になんかいるんじゃないか?」
  「まさかぁ、虫だったらそんなにあちこちは刺さないわよ」と妻は言います。 中学1年生になった息子(おバカの世界の表紙のキャラクターモデル)は、
  「それはあれだね。冬になって空気が乾燥して肌も乾燥するからなるんだよね。いわゆる寒冷じんましんみたいな もんじゃないの」と、物知りげに言います。この子は小さい頃からアトピー気味で時々皮膚科に連れていかれている ので、恐らくそのあたりで聞きかじってきた知識なのでしょう。まんざら嘘でもなさそうで、私もとりあえず納得 してしまうのでした。
  会社に行ってもまだ何となくあちこちが痒く、時々人目を憚りながらボリボリと していましたが、休憩時間、休憩室でテレビを見ていた時の事です。テレビコマーシャルに「花王の薬用エモリカ」 という入浴剤がでてきたのです。短い時間でしたが、何でも「ムズムス、カユカユ」に効果がある旨の内容です。
私は首筋を掻きながら、「これだ」と思いました。入浴剤なら副作用の心配もなく、第一子供たちが大好きです。 もらい物の「草津の湯」とか言う入浴剤は「まるで温泉にいったようだ」と喜んでいたものでした。
すぐに私は、「薬用エモリカ」を買って来て今晩の風呂に入れるようにと家に電話をしました。
帰宅しますと、指令通り「薬用エモリカ」が購入してあります。
宣伝が行き届いているのか、テレビで映し出される白いボトルの方は売り切れで、ライトグリーンのボトルの 方を買ってきたとのこと。
一瓶1070円で約15回分と書いてあります。1回あたり70円ほどになりましょうか。

  当夜この薬剤を規定量(約30ml)を我が家のバスタブに投入し、はじめに小学生の 娘が入浴しました。喜ぶかと思いきや、ことのほか評判が芳しくありません。消毒薬の臭いがイヤだ、と言うのです。 次に入った息子も、イヤではないが皮膚科と同じような臭いがすると、暗に好みでない事をほのめかします。
  そして、とうとう晩酌を終えた私が入浴する番が来ました。
臭いは、確かに消毒薬のような病院の臭いですが、不快というような感じはしません。まあ、子供には病院を想起 させるだけで嫌悪感があるのでしょう。私には、むしろ薬効が染みわたる心地よい臭いに感じられました。
色は、白が売り切れだったため、やや乳白色に緑を混ぜたライトグリーンですが、ボトルには「乳黄色の湯」と 表示されています。

・・・・・・・・・そして核心・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  私の入浴スタイルとして、いつも湯船に入りながら歯ブラシを行う習慣があります。 この時も愛用のナショナル電動歯ブラシを持参し湯船につかりました。歯ブラシをしながら「薬用エモリカ」のボトルを手にとって 眺めてみました。まず表側には

かさつく肌にうるおい

「薬用」エモリカ

荒れ性/しっしんに
−オーツ麦エキス配合−
シトラスの香り
薬用入浴液          
約15回分  花王(三日月マーク)

となっています。オーツ麦が何なのかも知りませんし、そのエキスが入るとどういう風にいいのかも知りません。シトラスが 何なのか定かではありませんが、ひょっとしたら植物の名前かもしれません。だとすると妙に消毒薬臭い植物があるもんです。 とりあえず、何のこっちゃ判りませんが、なんか効くかなーという気にはさせます。
しかし表側には私の当面の目的である「ムズムス、カユカユ」に効くというコピーがありません。
ひょっとしたら裏かな、とも思い見てみました。
  裏には次のようにあります。

販売名  エモリカx(シトラスの香り)
乳白色の湯
次に枠に囲まれて
カサつく肌にうるおいを補う薬用入浴剤です。
保湿成分(オーツ麦エキス・セラミド)が
肌の角質層まで浸透。使い続けると、
白い粉をふいたカサつく肌もつるつるに。
荒れ性・しっしんなどの肌にも効果的です。

干し柿や干しいものように人間にも白い粉がふく肌があるのかなと思いましたが、ここにも「ムズムス、カユカユ」 に効く旨の表示はありません。
もっと下を見ると「使い方」フタを開け、・・・・・使用後はフタをきちんとしめてください。に続き「効能」と あります。
「効能」荒れ性・しっしん・ひび・あかぎれ・しもやけ・冷え性・
疲労回復・肩こり・腰痛・神経痛・リウマチ・痔・にきび・あせも

なんと、ここにも我が目的の「ムズムス、カユカユ」の記載が見あたりません。
湯船につかり、歯ブラシ作業を遂行する中、くだんの瓶を返す返す眺めたのですが、テレビのコマーシャルのような 「ムズムス、カユカユ」の記載がないのです。失望の念を禁じ得ませんでした。
しかし、世帯主として家人に購入を命じ、1070円の投資をした以上、ただ効かないと引き下がるのでは一家の主と しての沽券に関わります。
なんか体によかったという証がほしいという藁にもつかまる思いで、もう一度効能書きを見ました。
しかし、私は荒れ性でもないし、しっしんも、ひびも、あかぎれも、しもやけもありません。冷え性でもないのです。 いくらか人並みに疲労はあるかなと、両手首から上だけ出してググーっと一層、肩までお湯につかりました。 しかしたいして疲労回復の用もないし、肩こりも、腰痛も、神経痛も、リウマチも、痔も、にきびも、あせももありません。
これでは投資に対する回収がおぼつきません。どうしたものか、私は一家の主としての責任から深く悩みました。
そして、思い至ったのでした。窮すれば通ず、とはよく言ったもんです。効能を今の病気の治癒に限定すると考えるから 息詰まるのであって、将来の病気の予防と考えれば自ずから道は開けるはずです。そういう視点で、もう一度「効能」を見て 私は「これだ」と思いました。それは「痔」という文字です。

  誤解のないように言っておきますが、私は決して痔ではありません。
ただ、痔の苦しみはよーく知っています。会社の同僚にはこの病の人が多く、その苦しみを切々と話してくれます。 排便の時、手術の時の苦しみ、会社の男子用トイレの便座にたまに血痕のあるのを見かけたりすると、痔にだけは なりたくないもんだとツクヅク思うのでした。
そうです。この「薬用エモリカ」を痔の予防と位置づければ、千円をこす投資に対する効果と、家人をして納得せしめ得る ものがあるのではないかと考えたのです。(一家の主としての苦しい立場をご理解いただけるでしょうか)
  早速、実行に移すためには、薬効が目的の部位、つまり水戸の副将軍光圀公のあらせられる 玉座にオーツ麦エキスなどを深く浸透させなければなりません。しかし、この部位は解剖学的にいって普通の姿勢では臀部の 狭間に押しつけられ簡単には露出しない構造になっているのです。無意識にやっている人も多いでしょうが、注意深く人生を 見ておられる方なら、その部位を露出するために人間は、臀部を突き出すという行為が必要だという事を深く意識して排便など なさっておられる事と思います。
下の写真のように我が家の風呂はけっして広くありません。その中で、いかに効率的に突き出し、部位を露出し、エモリカの薬効 成分を深く浸透させるか、それにはこれしかない、と考えました。

*風呂場鳥瞰図*

・・・まず体を「く」の字にするために足を湯面より上に突き出します。 よく外国映画で美女が入浴するときのシーンをご想像ください。それは丁度、「銀座ジュエリーマキ」のテレビコマーシャルで 女優がハイヒールを履いたまま足を挙げてシャンパンを飲んでいるシーンに似ていました。
私は高く突き出した自分の足を見て、ナルシスの感慨に耽りました。まるで「銀座ジュエリーマキ」そっくりです。 違いと言えば、シャンパンがないことと、ハイヒールを履いていないこと、それにスネに毛が生えているという事だけです。

私はかなり満足しました。やはり「エモリカ」を買ってよかったと思い始めていました。
しかし、問題の痔の予防に関わる部位に意識を集中させますと、必ずしも、エモリカのエキスを含んだお湯が部位に触れて いません。このままでは効果は半減です。やはり臀部を押し広げる必要性も感じました。
その時、私は右手にエモリカのボトル、左手に歯ブラシを持っていましたから、最も手軽な方法として突き出した足を V字型に左右に開くという行為に及びました。
と、その時です。薬効が部位に深く浸透するのを確認するひまもなく、両手が不自由なままバランスを崩した私は、 お尻を前に滑らせ、頭をザブンと薬用エモリカの湯に埋没させたのです。溺れかかりながらも急いで体制を立て直した 時には、思い切りエモリカの湯を飲み込み、目を白黒させながら、むせり返ったのでした。
腰を少しひねってしまい、腰痛に効くはずが逆効果。口に残るシトラスの香りをすすぎ、腰をなでながら湯船を出る 私でした。

教訓として、また一つ学びました。投資に失敗したときは損失を回収しようとしてあがい てはいけません。謙虚にあきらめましょう。傷口を広げるだけです。致命傷になることさえあり得ます。


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