007はおバカの番号

おバカのライセンス
おバカの世界の秘密諜報員・百舌花

007 おバカ 百舌花 極秘指令 発令!

殺しのライセンスを取得した百舌花諜報員の運命

 
スペクタクル腸対策「おバカのライセンス」

おバカ秘密諜報員「百舌花」、この作品の出来いかんでは、極秘情報入手もあり得るとの期待に、
 張り切ってのチョー意欲作!されども勇み足、またまた諜報活動失敗のお粗末。何でこうなるの?とほほ。 
 


 

*おバカが手に入れた「チョー秘密兵器!」

  30年ほど前007シリーズという、イギリス諜報部員ジェームスボンド氏の活躍を描いたスパイ映画が大ヒットしました。
当時、多感な思春期を迎えた私は、胸をワクワクさせて映画館に見にいったもんです。
ショーンコネリー扮するスパイが、スペクトルとか言う悪の組織に潜入して、その世界征服の陰謀を粉砕するのですが、アクションあり、お色気ありで毎回安心して胸を躍らすことが出来ました。まあマンネリという点ではあの「水戸黄門」みたいなもんですね。ボンドは助さん角さん、ボンドガールの金髪美女が由美かおりさんの入浴シーン、秘密兵器が風車の矢七の飛ばす風車でしょか。そんでもって悪代官と越後屋が悪の組織スペクトルの幹部ということになります。まー、印篭が、殺しのライセンスってことになるのでしょうか。ボンド氏は、やむを得ない場合は人を殺すことを許可する旨のお墨付き「殺人許可証」なる物をお持ちなのです。
私は、もー、すっごく憧れました。夢想もしました。私がそのライセンスを持ったら、あいつとあいつに制裁を加え、秘密兵器を持ったらあいつとあいつの尻の下で爆発させてやろうとかと思ったりしました。毎回、映画に登場する秘密兵器のリストを作ったりもしました。

・・・・・そして今、時は流れて30年、私もスパイに!・・・・・・・・・・・・

  ある夏も終わりの、とある休日。風呂の蛇口から水漏れするという我が家の情報省女幹部からの指令で、DIYに水道部品を買いに行った時のことです。
入り口の夏物処分のワゴンの中からすっごい秘密兵器を発見したのでした。その名も「ハイタッチ」、価格は定価1980円のところ、夏物処分特価980円(安い!!)ちゃんと箱に入ってるし、収納用のビニール袋1枚、単三電池2本も付属しているのです。

写真左が新兵器"ハイタッチ"
一見すると、単なる子供のおもちゃのバトミントンラケットに見えます。しかし、これが秘密兵器のツネ。スパイの道具はいつもこのパターンで人を欺くのです。一見ライターのような形のカメラ、腕時計のような通信装置、万年筆のようなピストル。でもスパイ映画を見続けて30年の私を欺くことはできません。これぞ私が長年探し求めた「夢の秘密兵器」と看破した私は即座に購入を決定したのでした。私の乏しいお小遣いでも買える価格設定も魅力です。
水道部品と秘密兵器を、愛車に載せて家路につく頃には、私はもう、ナルラー・ジェームスボンドです。世界に誇る日本の大衆車(購入後6年、傷多数、きしみギーギー、冬タイヤ履きつぶし中)も真っ赤なオープンカーに思えてきます。ボタンを押せば前からはミサイルが、助手席は空に飛んでいくような、くるくるとナンバープレートが変わったりと、思いは遙か「田舎より愛をこめて」か「おバカ世界は永遠に」てな気分。

  さてさて気持ちの高ぶりを抑えられず、帰宅すると、さっそくの「秘密兵器」の点検です。いったい、なんの秘密兵器か?お疑いのあなたに、箱の表書きからご紹介しましょう。

新製品
ハイタッチ
カ・ハエ退治の革命児! igh ouch
特許出願中  [単三電池2本付]

  箱のウラには

まずイラストがあり、そのせつめいで「ご家庭で、赤ちゃんが寝ているお部屋で、バーベキューで、キャンプで、釣りで、ハイキングで」とあります。

[ご使用方法](要約)
電池を入れ、安全切替スイッチをON、把手のスイッチを握り、ハエやカに軽くふれる。この際、強く打ちつけない。故障の原因になるから。電圧により、カやハエが落ちます。網の間に入ったムシは軽くネットを叩いて落とす。床に落ちたムシはティッシュ等で拾う。

警告!
この商品はオモチャではありません。ご使用上の注意をよくお読みください。
[ご使用上の注意](要約)
乱暴に扱うなとか、水に濡らすなとか、トラブッたら使用をやめろだとか、よくある注意があって
●本製品は虫退治用具のため虫以外に使用しないで下さい。とある。

やっとおわかりでしょうか、これは虫を殺す道具なのです。これぞ私が長年探し求めていた、あのボンドさえも持っていなかった秘密兵器、そしてまた「殺しのライセンス」ともいうべき物です。百舌花感激!

■発売元は
リョウメイコーポレーション(静岡県榛原郡の会社なのです)世界に向けて発信するインターネット上ではこれ以上の住所を書けません。各国の情報部が押し掛けたらたいへんですから。
ともあれ、秘密兵器は静岡で密かに作られていたのでした!

さて、ここまで説明を読むこと3分、私は来たるべき非常事態に備え、とりあえず実験をしておかねば、と考えました。イラストの説明のように、我が家には「赤ちゃんが寝ている部屋」はありません。バーベキューもキャンプも、釣りも、ハイキングもしない非活動的諜報部員の私は、やむを得ず「ご家庭で」を試すことにしました。
ところが、改めて我が家のさほど広くもない居間を眺めてみると、ハエもカも1匹もいません。そう言えばこの頃、奴等に会ってないなぁ。どこに行ってしまったんでしょう。こんな事では金鳥もアース製薬も商売あがったりだよね、などとよけいなことを考えましたが、そんなことより実験はどうしたものでしょう?台所も見ましたが、いません。便所にもいない。我が家で一番汚い息子の部屋も見ましたが、まったくいません。こんな事なら、ウンコの1つも置いて、ハエを集めておくんだった。昔はよかった。ハエなんか、居間の空間を常時旋回してましたし、台所だって便所だって1匹もいないなんてことはなかったように思います。今はどの部屋にも網戸が付いて、カの進入する隙間もありません。急に開け放したとしても、そうそう入ってくるものでもありません。だいたい、蠅蚊密度がきわめて低い状態の過疎の社会になっているのです。あー、秘密兵器の実験もままならないなんて、もう死んだほうがましです。
しかし、人間、死ぬ気になれば自殺だって出来るものです。ふと外をみると、我が家にも小さな庭があるではありませんか。「ご家庭で」に限定して考えたからいけないのです。発想の転換と言いますか「ご家」を抜かして「庭で」にすればいいのです。いかに狭いといえど、外のはしくれ、ヤブ蚊の1匹や2匹いないものでもありません。その日は残暑の戻りのきつい暑い日で、庭に出るのもシンドイ気もしたのですが、世界を悪の軍団から守るためならしかたありません。さっそく、サンダルを履いて庭に出ました。
しかし、その辺をウロウロ探しましたが、なかなか敵は現れません。こんなことでは、悪の軍団の地球征服から、人類を守ることもかないません。1匹の蜂が飛んでは来たのですが、私の秘密兵器ラケットを、いたく簡単にかいくぐりどこかへと飛んでいきました。「こんな世の中ならもう死だほうがましだ」つぶやいたとき、目の前に首をくくるのにちょうどいい木があるのに気がつきました。「サルスベリの木」です。
この木は高さ3、4メートルもありましょうか。近所の家で今頃は、どこもたくさんの花を咲かしているにも関わらず、我が家の「サルスベリの木」は小さいのがちらほら咲くだけでかなり貧相なのです。これは日当たりが悪いせいだろうと、先週、植木屋さんに日当たりのいい、そこの場所に植え替えてもらったばかりなのでした。
その木の幹のなめらかな木肌を見ると、いるいる、何百匹という小さなアリが上ったり下ったりしていました。「これだ」と思いました。なーに、カもアリも似たようなものです。世界征服から人々を守るためにはアリさんにも我慢してもらわねばなりません。

  ヒヒヒっと不敵な笑みを浮かべながら、私は秘密兵器実験の準備に取りかかりました。なんとなく秘密情報部員というよりは、ナチスの収容所所長のような気もしないでもないのですが、ここで情けは禁物です。スパイは非情なものなのですから。
はじめに安全切替スイッチをONにしてボタンを握ると、ハイタッチの手元の小さなランプば妖しく光ります。左手に持ったラケットの金網部分の面を上に向けて、木を揺すって落ちてきたアリをすくい取ろうとの作戦です。何匹もいるアリです、簡単にすくえるだろうともくろみました。金網恢々疎にして漏らさず、です。

準備万端あいととのい、一二の三で、強く木を揺すりました。ところが、最近その木を移植したことを考慮に入れるのを忘れていたため、木は思いのほか強くゆれ、バラバラと雨あられのようにアリが、私の頭といわず顔といわず、上を見てたものですから、口には入る、襟元から背中へは入るで、秘密兵器の実験どころの騒ぎではありません。踊るようにしてシャツを脱ぎながら、ペッペッと口に入り込んだアリを吐き出しましたが、アリは何匹も背中でうごめき、髪の毛にまで進入しています。芝生の上に投げ出した秘密兵器をその場に残し、家に駆け上がると風呂場に一直線。裸になってシャワーを浴び、髪の毛に入ったアリめを追い出すためにシャンプーまでしてしまうのでした。
一段落して脱衣所に上がり、脱ぎ捨てた衣類を見ると、私のパンツの中を観光しているアリの御一行までいました。
バスタオルで髪を拭きながら居間に戻って庭を見ると、息子が私の意志を継ぎ、置き去りにした秘密兵器でアリ退治に励んでおります。父の仇討ちをするとは、孝行者というべきなのでしょうか?それとも、親の災難を意にもとめない不孝者というべきなのでしょうか?

私がすっかり懲りた秘密兵器実験の跡を継いだ息子の報告によれば、アリぐらいの小昆虫ならチリチリと小さな音をたててすぐに死ぬ、蜂ぐらいになると失神して落ちるが、数秒後に蘇生して飛び立つ。蝶、トンボのような大昆虫だと死にはしないが、すごくいやがり急いで逃げるようだ。ということでした。深ーく納得して、以後、秘密兵器は見るのもイヤな私です。

教訓  やっぱり、むやみに殺生をしてはいけません。

・・・・その夜は、アリが降る夢にうなされ続け、
目が覚めてもなお背中がムズガユイのでした。

 


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